近年その超絶な技巧と作品の独自性で注目されている江戸時代の画家 伊藤 若冲の絵画は、これまで蒔絵の下絵となることがほとんどありませんでした。
若冲の絵画を蒔絵で表現するとどのような作品となるのか。期待を持って挑戦しました。
蓋表に描かれている「雪中雄鶏図」(細見美術館蔵)は、若冲が「景和」と名乗っていた30代前半頃に描いたとされる初期の名作。
彩色豊かで精緻に描かれた鶏を研出し蒔絵、高蒔絵、研切り蒔絵という技法を併用し、立体感をもたせながら細部を精緻に再現しました。
蓋裏に描いた「虻に双鶏図」(細見美術館蔵)の鶏一羽と虻は、銀粉と炭粉を使用した銀研切り蒔絵で水墨画のように幽玄に表現しました。
硯箱の身内側は蓋裏と同じ風情を表現し、若冲の落款を水滴に施しました。
銀研切り蒔絵の作品は象彦ではおよそ100年ぶりの製作となりました。
*銀研切り蒔絵(ぎんとぎきりまきえ):黒く描くところに炭粉、銀色の部分に銀粉を蒔き、全面に漆を塗り込んだ後、炭で絵を研ぎ出す研出し蒔絵の一種。
This inkstone box is based on a painting by Jakuchu Ito, a painter of the Edo period, with beautiful roosters lavishly painted on the front and back of the lid.
(Cooperation: Hosomi Museum)
The maki-e on the back of the lid is produced with a delicate technique using silver, which is the first time in 100 years that Zohiko has revived this technique.