京都国立博物館に所蔵されている江戸時代の作品を写した作品です。
有明蒔絵の意匠は「風雅和歌集」巻十六、前大納言実明女による、
朝がらす 声する森の梢しも 月は夜ふかき ありあけのかげ
の歌絵意匠であり、月がまだありながら、夜が明けていく様子が表現されています。
蓋表には、「声・する・朝」内側の上部には「ふか・き」と歌を暗示する文字が隠されています。
その背景は金をぼかしながら蒔くことで白みゆく空を、また、銀と黒く色付けされた銅で象嵌された鷺や烏、
内側にも色鮮やかな七宝が施された水滴などの多くの技が使われ、
蒔絵技法が最高度に達した江戸時代の気品に満ちた作品を再現しています。
また、硯は木製で非常に軽く、表面には炭粉が使われている点も特徴的です。